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「どう育てたいか」より、「どう育っているか」──60年前の育児書が今も読み継がれている理由とは?

  • 7月14日
  • 読了時間: 6分
『私は赤ちゃん』は、1960年に出版され、80回以上も刷を重ねるロングセラー。小児科医・松田道雄が赤ちゃんの立場から描いたこの一冊は、「どう育てたいか」より「どう育っているか」という、私が大切にしている子どもの見方と深く重なっていました。
『私は赤ちゃん』は、1960年に出版され、80回以上も刷を重ねるロングセラー。小児科医・松田道雄が赤ちゃんの立場から描いたこの一冊は、「どう育てたいか」より「どう育っているか」という、私が大切にしている子どもの見方と深く重なっていました。


私の本棚に、何度も読み返してきた一冊の育児書があります。


小児科医の松田道雄(1908〜1998)先生による私は赤ちゃんです。


1960年の初版以来、半世紀以上にわたり80回以上も刷を重ねてきたロングセラーです。 この本が、今、ビジネスの第一線で活躍するパパたちの間でも、あらためて注目されているそうなのです。



■ 赤ちゃんが主人公の、ちょっと変わった育児書


『私は赤ちゃん』は、いわゆる育児のノウハウ本ではありません。


主人公は「赤ちゃん」。


赤ちゃん自身が語り手となり、赤ちゃんの立場から親たちへ語りかけるという、1960年の当時としてはとても斬新な育児書でした。


続編の『私は二歳』とともにベストセラーとなり、多くの親たちに読み継がれてきました。


あとがきの中で、松田先生はこんなことを書いています。


「診療室で毎日さまざまの赤ちゃんに接しながら、赤ちゃんは両親や他のおとなから、かなり不当な取り扱いをうけているのを感じていたので、この本の執筆を喜んで引き受けた」

この一文を読んだとき、「赤ちゃんの立場に立って育児を考える」という、この本の原点がよく伝わってきました。



■ 「排泄のしつけ」に描かれていた、60年前の赤ちゃん


この本の中に、「排泄のしつけ」という章があります。

そこでは、主人公の「赤ちゃん」が、自分の排泄について、ユーモアたっぷりに語っています。

例えば、こんな内容です。

  • 母親は、生後6か月頃になると、赤ちゃんの排泄のタイミングが分かるようになる。

  • その頃からトイレへ連れて行くと、赤ちゃんは自然に排泄する。

  • ところが、月齢が上がると、急にトイレやおまるを嫌がるようになる。

そして、その様子を見た母親は、

「ああ、坊やはもう反抗期が始まってしまったわ! 今からこんな状態で、将来どうなるのかしら……」

と、本気で心配します。


そんな母親を横目に、主人公の赤ちゃんは、

「チェッ、どうしてイチイチ、そんなに深刻そうに騒ぐんだよ。」

と、心の中でつぶやくのです。

思わず笑ってしまう場面ですが、私はここに、まさに今お伝えしている「0歳からの自然なおむつ外し」の赤ちゃんの姿を見ました。

60年以上前、小児科医の松田先生は、赤ちゃんの目線から、排泄の自然な発達の流れがわかっていたのです。

だから私は、このページを読むたびに思います。

「60年後の現代でも、小児科医の先生が、こうしたことを親御さんたちへ伝えてくださったら、おむつ外しで悩む親子は、もっと少なくなるのにな...」

つい、そう感じてしまうのです。



■ 時代は変わっても、赤ちゃんは変わらない


この60年間で育児を取り巻く環境は大きく変わりました。


紙おむつは進化しました。

離乳食も変わりました。

便利な育児グッズもたくさん生まれました。


でも、


動物としての人間の赤ちゃんは、60年前も、今も変わっていません。


眠ること。

泣くこと。

おっぱいを飲むこと。

そして、排泄すること。


赤ちゃんは、自分の体を使いながら少しずつ成長していきます。


だからこそ、色々な育児法を学ぶ前に、


「人間の赤ちゃんとは、どんな存在なのか」

を知ることが、何より大切なのだと思います。



■ 現代のパパたちの間で、再び注目されている理由


実は最近、この『私は赤ちゃん』が、ビジネスの第一線で活躍するパパたちの間で、あらためて注目されているというネット記事に出会いました。


「一般的な育児ノウハウ本を何冊読むより、この一冊を読んだほうが赤ちゃんのことがよく分かる。」


そんな感想が紹介されていました。

私は、その理由がよく分かる気がします。


この本には、「こうすればうまく育つ」というテクニックは、ほとんど書かれていません。


書かれているのは、

「赤ちゃんとは、どんな存在なのか。」

その一点です。


だからこそ、60年以上たった今でも、多くの人の心に響くのでしょう。



■ 私が伝えたいのは「方法」ではなく、「赤ちゃんを理解すること」


私自身、約20年にわたって、親子や保育者の皆さんと一緒に、子どもの排泄について学んできました。


その中で、ますます強く感じるようになったことがあります。


育児の方法は、時代によって変わるけれど

赤ちゃんは変わらない、という事実です。


だから、私たちは、新しい育児法を探し続ける前に、一度立ち止まって、

「赤ちゃんは、何を感じ、何を伝えようとしているのだろう」

そんな視点を持つことが大切なのではないでしょうか。


私は講演や講座で、

「どう育てたいか、よりも、どう育っているか、のメガネで子どもを見ることが大切です。」

とお話ししています。


大人はつい、


「早く歩けるようになってほしい。」

「早く話せるようになってほしい。」

「早くおむつが外れてほしい。」


そんな "どう育てたいか" に意識が向きがちです。


でも、本当に大切なのは、


「この子は今、どんなふうに育っているのだろう。」


という視点です。


私は、この『私は赤ちゃん』という本も、まさにそのメガネで書かれた本だと感じました。


赤ちゃん自身に語らせることで、

大人の期待や都合ではなく、


赤ちゃんの今を理解しよう。


そう、静かに語りかけてくれているのです。


60年以上前、松田道雄先生は、赤ちゃんの立場に立って育児を考えました。


そして、その視点は、今も少しも色あせていません。


情報があふれる時代だからこそ、この本は私たちを育児の原点へと連れ戻してくれる一冊なのだと思います。


私が「自然なおむつ外し」でお伝えしたいのも、まさにこの「赤ちゃんを理解する」という視点です。 この一冊は、これからも折に触れて、読み返したいと思います。


もし、このブログを読んで、

「赤ちゃんのことを、もっと知りたい」

そんなふうに感じていただけたなら、とてもうれしく思います。

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文責:和田智代(一般社団法人 こどもと家族の排泄サポート研究所 代表理事) 


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